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所属: 保健福祉学部保健福祉学科作業療法学コース 職位:教授,保健福祉副学部長,保健福祉学科長,附属診療センター長補佐 学位:博士(医学)
研究室:県立広島大学三原キャンパス4428号室
E-mail:mori@(@の後にを付けて送信ください)
研究内容:https://researchmap.jp/read0053527
脳が運動をどのように制御しているのかを明らかにする研究をしています。この研究は脳卒中や脳外傷後の脳機能回復を促進させる新しい治療法やリハビリテーション法を提案する上で重要な意義を持ちます。
「歩行運動」は最も基本的な運動であり,私たちは生後発達の過程でこの運動能力を獲得します.一度この能力を獲得すると,日常生活の中で「歩行運動」を意識して行うことはありません.しかし,脳卒中や脳外傷後にはしばしば運動機能障害のために意識しても「歩行運動」を行うことが困難になる場合があります.これは脳が「歩行運動」を制御しているからだと考えることができます.しかし,その制御の詳細はいまだ明らかではありません.今後は,特に大脳皮質機能との関係を明らかにすることが期待されます.
また,脳卒中後の機能回復を促進させる医療の提言はこれを求める人々にとって極めて有益です.そのためには運動そのものが脳によってどのように制御されているのかの理解を深化させることが大切です.また,実際の脳卒中者を対象とした研究も必要です.「歩行運動」を含めた運動機能は脳の様々なメカニズムによって実現されています.どのような状況でどのようなメカニズムが発現するのか,それによってどのような運動が具現化されるのかなどを明らかにすることができれば新規治療法やリハビリテーション法を確立することが可能であり,健康な社会の実現に貢献できると考えます.
脳に病気やケガがおこると,様々な機能が低下したり,場合によっては消失したりすることがあります.このことから,脳がこれらの機能をコントロールしていることが分かります.例えば,歩くこと(歩行)を考えてみましょう.歩行は私たちにとって最も基本的な運動の代表例ですが,これがどのように脳によってコントロールされているかさえ実はまだ完全には明らかになっていません.このような基本的な脳機能を明らかにすることは,脳の病気などで歩行に支障を生じた患者さんの歩行機能を高めるための治療法を提案するために必要です.決して簡単な研究ではありませんが,これを明らかにすることによって得られる効果は大きいと考えられます.
上記の目標を解決するために様々な研究に取り組んでいます.ここでは代表的な3研究を紹介します.一つは,若年成人を対象として歩行運動の脳によるコントロール機序を明らかにしようとするものです.そのために脳活動とともに筋活動を記録し,相互の関係を評価しています.二つ目は脳卒中などの患者さんの脳機能状態を可視化し,そこからどのようなアプローチが脳機能の正常化につながるかを明らかにしようとするものです.この研究は効果的なリハビリテーション方法とともに積極的な治療法を提案するものでもあります.最後に手足の関節固定に伴う脳活動の変化を評価し,運動をしない(不動)ことの脳への影響を検証しています.コロナ禍で家にいる機会が多くなった高齢者には運動機能の低下だけではなく認知機能の低下を生じるケースが散見されています.この研究により脳活動を保つ方法を提案することを目標としています.これらの研究を一人で行っているわけではなく,これまでも目的を共有する様々な方々と一緒に進めています.今後もそのような連携を強化して,研究を進めていきたいと考えています.
医師
歩行,姿勢,運動,大脳皮質,皮質脊髄路,経頭蓋磁気刺激,脳卒中,機能回復,リハビリテーション