本文
明けましておめでとうございます。新年の仕事始めにあたり,新年のご挨拶を申し上げます。
本日,2015年1月5日(月),広島?三原の天気は晴れ,庄原では朝方に雪が少しちらついていたようですが,3キャンパスとも無事に平成27年の仕事始めを迎えることができました。皆様は様々な希望と想いを抱いて新年をお迎えになっていることと思います。私も,この1年,心をも新たにして,一段と発展した県立広島大学の構築を目指し,皆様と共に頑張っていきたいと思っております。本年もよろしくお願い申し上げます。
今年は羊の年。干支は古代から暦,時間,占いに使われてきましたが,羊はくちへんに羊と書いた「び」と呼ばれる漢字に由来していると言われています。占いでの意味として,「び」は,類似した文字である味という漢字に通じ,熟成して匂いや味がそなわるという意味を持って使われているそうです。
その熟成と言う言葉に立ち返りますと,本学は2015年3月で,県立広島女子大学,広島県立大学,広島県立保健福祉大学の3大学の再編統合後10年という一区切りを迎えることになります。まだまだ社会に対して,魅力ある熟成感を十分に醸し出すところまでは到りませんが,促成栽培の10年ではありませんでした。確かに,統合時当初は,不統一感が際立っていましたが,教職員のたゆまぬ努力,設置者である広島県の御理解及び同窓会?後援会などの御支援を受け,次第に統合された姿が創られてきました。その結果,現在,教育?研究そして地域貢献におきまして,熟成に向けて着実に歩みつつあるということは,自信を持って言えると思います。
例えば教育におきましては,FD(大学教員の教育能力を高めるための実践的方法)などの実施努力により,著しい教育力向上が図られ,学生の授業満足度は94%(平成25年度)に達しています。また,研究におきましては,教員総数の減少にもかかわらず,文部科学省の科学研究費助成事業の採択件数は,平成17年の統合時の2倍以上に増加し,今年度は中国?四国?九州?沖縄の26公立大学の中では,他の追従を許さない105件に達しています。さらに,こうした教育と研究力を背景に,地域での多くの学術講演,そして毎年十数件を超える地域課題研究を遂行するなど,地域に根ざす大学としての姿を,しっかり地域社会に提示しつつあります。
そうした歩みの上に,昨年末,平成27年度に取り組むべき,教育?研究にかかわる3つの重点課題を提示しました。「グローバル化」,「教育改革」,そして「経営学分野強化としてのMBA設置」への取組です。これらの3つの課題実践の根底には,明確に共通したものがあります。それは本学に学ぶ学生や社会人を対象として,今の社会が求め必要とする人材をしっかりと育成するという,大学の基本的な役割を確実に実践すると言うことです。
それではどのような意識で,私達は人材育成というミッションに向かい合ったら良いのでしょうか。受講生90人の学生の名前と略歴を全て覚えて講義に望む姿勢を貫いている,ハーバード大学MBA教員のイーサン?バーンスタイン氏が語った言葉にその答えがあります。彼の教育の目的は,「学生自らが積極的に授業に参加し,人生や仕事について,新たな視点と提言を示せる能動的な力を身につけさせることにある」と明言しています。実はこの言葉は,私達が昨年から取り組んでいる,公立大学として唯一文部科学省の採択を受けた,「能動的学習(アクティブ?ラーニング)推進教育プログラム」の目指す教育目標と全く一致しています。
新しき年,そして本学の10周年の節目にあたる2015年,地域社会が本学に求める声に耳を傾けながら,私達は自信をもって,能動的教育の実践を強力に推進しながら,教育改革,そして地域社会に応える大学としての存在を社会に示すことが必要です。
「世の中をゆり直すらん日の始め」という小林一茶の句があります。この気概を持って地域社会の課題に立ち向かえる学生や社会人を,少しでも多く輩出できる人材育成の力を熟成させていくことが,本学の進むべき重要な柱の1つとして求められていると確信しております。そのための努力を,県立広島大学の3キャンパス全構成員が共有しながら,共に歩む2015年として頑張って参ります。
平成27年1月5日
県立広島大学 学長 中村 健一