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参加学生氏名 | 土井脇 百香さん |
私にとって,この約4カ月間の留学はとても充実しており,英語を学ぶだけでなく,最も学びたかった「フィンランドの教育制度」について「英語で」学ぶことができた。特に,学校への訪問など現場を見て専門的な知見を得られたのは貴重な経験であり,留学の目的の1つを達成できたと言える。本報告書では,それらを踏まえて私がフィンランドで得た学びを共有する。1つ目に,フィンランドでは高等教育段階で職業教育が盛んである。日本では,職業に直結する訳ではないが,文系学部や様々な分野を幅広く学ぶ総合科学系学部の割合が多い。一方で,フィンランドでは応用科学大学という職業教育が中心の高等教育機関があり,一般大学よりも設置数は多い。そのため,大学に行くまでに将来の具体的な職業を見据え,それに直結するスキルを得るために大学を選ぶという考え方が一般的である。また,実際の教育現場からも職業教育に力を入れていることを実感できた。私は授業の一環で応用科学大学に訪問調査をし,ビジネスコースとエンジニアコースの授業を見学した。ビジネスコースでは,単に経営の知識を学ぶのではなく,1学期間を通して地域の課題を解決するグループプロジェクトを実行していた。その際に,実際のビジネスの現場で使われる計画履行シートを使い,活動の効率性,円滑なコミュニケーション,成果を最大化するための工夫などを意識しながら進められていた。また,エンジニアコースでは,会社との連携など実践的な教育が充実していた。例えば授業以外にも,有給インターンシップがメインの授業など,現場で学ぶ場面が多くある。さらに,学内の実習室は会社と同等の機材がそろっており,インターンシップや現場と同様の環境に整備された実習室によって,卒業後も教育と仕事とのギャップをあまり感じないように学習環境が整備されていた。2つ目に,フィンランドでは移民の教育に対する支援が手厚い。教育理念の1つに,「国籍などを問わず誰もが等しく質の高い教育を受ける」とあるように,国や地域,学校が協力して教育支援を行っている。例えば,移民にとって一番の障壁はフィンランド語と言える。コースの一部はフィンランド語のみで提供されており,言語が理由で教育の機会が奪われてしまう可能性もある。そのような状況を防ぐために,高等教育では無料(入学試験あり)の高等教育準備プログラムがある。私が見学したプログラムでは,ただフィンランド語を学ぶだけの語学の授業ではなく,それぞれが興味のある学問分野について,同じ分野を学ぶフィンランド学生にフィンランド語でインタビューをするというグループプロジェクトだった。そうすることで,話す?聞く?書く?読むといった能力をバランス良く養い,かつグループワークを通してフィンランド語で円滑にコミュニケーションをとる練習にもなる。さらに,学問分野を正しく理解することで,今後の進路を決める上でも有用な情報が手に入る内容に工夫されていた。
このように,現場を観察することで,文献中心の調査では明らかにできなかったフィンランドの教育制度の内部を具体的に学ぶことができた。これは卒業論文にも多いに活かせる。また,これらの訪問調査の手配は自らすべて英語で行ったり,日本人ではないグループメイトと協働したりすることは初めての経験だったが無事予定通り終えることができ,留学のもう1つの目的である慣れない環境で新たなことに挑戦し自信をつけることもできた。よって,総じて私の留学の目的は達成された。
最後に今後の課題である。それは,英語力の伸びをさほど実感できていない点である。授業の形式上,自主学習やレポートなど1人で学習する機会も一定数あったため,学生とのディスカッションや英語を聞く機会が多いとは言えなかった。だが,その分英語を積極的に使う機会を自ら作る努力はもっとできたと言える。留学が終わっても英語力を磨きていきたいため,国内でも引き続き英語学習に努めていきたい。