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生命科学科の五味教授の研究室では、北米から侵入したアメリカシロヒトリ(チョウ目:ヒトリガ科)が、日本の環境に適応する過程を研究しています。アメリカシロヒトリは、終戦直後の1945年に侵入し、その後に日本で分布を拡大しました。そして、1990年代前半までに温暖な日本の西南部では、年に2回発生する2化性から、3回発生する3化性に生活史が変化しました。また、2000年代に入ってからは、近年の温暖化の影響で、3化性地域の北限が北上しています。本種は侵入時期や原産地が明らかで、侵入後すぐに詳しく研究されているため侵入時のデータがあることなど、侵入種が新しい環境に適応していく過程や期間を明らかにするためのとても良い研究モデルです。また、この研究を通して、温暖化が昆虫に与える影響について有益な情報を得ることができます。
アメリカシロヒトリHyphantria cunea (Drury)の成虫。写真の上がメス、下がオス。
アメリカシロヒトリの終齢幼虫。若齢幼虫の時は特徴的な巣網を作って集合していますが、中齢幼虫以降は単独で生活します。毛虫ですが、毒はありません。